[ 本堅地技法 ]
数ある漆塗り技法の中で、輪島塗産地が採用しているのが本堅地技法。椀の縁や高台、
内側の底面など摩耗しやすい部分に、糊漆で布を張り補強をする「布着せ」を行います。
布は麻布、寒冷紗(かんれいしゃ)を使用しており、この工程を行うことで長く使い込んで
傷んでも「直す」ことができるのです。
「布着せ」の後は下地塗りに入ります。珪藻土を低温で焼き締めて砕いて粉にした
「輪島地の粉」を米糊と生漆に混ぜてパテ状にし、器全体に塗っては空研ぎをする
工程を3回繰り返します。回を重ねる毎に地の粉を細かくし、塗り込んでいきます。
研ぎ、中塗、上塗りを経て作られた塗装の断面は幾層にもなっており、
これが堅牢な輪島の漆モノをつくり出していると言えます。
[ 蒔地( makiji )技法 ]
これまでにあった下地の蒔地技法を桐本が独自に応用して、漆の質感を保ちながら、
金属のスプーンなどを使っても傷つきにくい表面硬度にすることに成功した技法です。
中小企業庁の「地域資源を生かすもの作り事業」や、2007年「新日本様式100選」にも
認定されています。
本堅地技法と同様、「布着せ」「下地塗り」を施した後、均一な漆塗りを行い、乾かない
うちに輪島の地の粉をまんべんなく蒔きます。蒔地( makiji )技法では、下地で使う
輪島地の粉をもう一度表面に近い部分でも使用しています。充分に乾かした後、
適度な研ぎを行い、さらに漆を塗りこんで表面硬度を高めます。
[ 拭漆技法 ]
漆塗りの中で最も基本的な技法。手あとや、ほこりなどを残さず丁寧に仕上げられた
木の上に直接漆を塗り込み、乾かないうちに布などを使って、擦り込むようにその漆を
拭き取り乾かします。器やスプーンなどは、それを3〜5回以上繰り返して仕上げます。
木目のきれいさ、優しさなどをより引き立ててくれる漆塗り技法です。
[ 地塗り千すじ仕上げ ]
充分に落着かせた木地を用い、強度を高めるための布着せ、下地塗りを行ったのち、
さらに新たな漆の表現に挑戦した「地塗り千すじ仕上げ」。特殊な刷毛で、強度が高い
輪島地の粉をたっぷり使って千すじ模様を付ける技法で落ち着いた表情と傷つきにくい
仕上げが特徴です。