《ブリューゲルの肖像》(部分)(『ネーデルラントの著名画家の肖像画集』(1572年刊))より エングレーヴィング ベルギー王立図書館所蔵 ©KBR

ピーテル・ブリューゲル(1525/30−1569)
ピーテル・ブリューゲルは、16世紀ネーデルラントの最も偉大な画家である。1551年、アントワープの聖ルカ組合に親方として登録後、数年間、イタリアに滞在した。帰国後、アントワープで国際的な版画店を営むヒエロニムス・コックの許で、1555年から版画の下絵素描を数多く制作した。1563年にブリュッセルに移住し、師ピーテル・クック・ヴァン・アールストの娘マイケンと結婚。1569年、同地で病死する。

《主題と作風》 
1559年頃から油彩画の制作に専念。大気感の溢れる風景表現、活気ある民衆文化の百科全書的な再現、深い省察による人間の道徳批判などは当時のハプスブルク家の為政者や人文主義者たちから高い評価を得た。さらに美術史上、初めて農民の世界を親近感のある眼差しで高い芸術性の対象とした。

《版画と油彩画》
ブリューゲルの版画作品と油彩画の相互関連性はきわめて重要である。版画での合成風景、主題を賑わす「づくし」的手法、多数の人物が登場する広場構図、民衆の日常生活の導入などがモニュメンタルな油彩画の中で昇華した。逆に農民の労働を描いた油彩画が後年の版画《春》《夏》のイメージ源となった作例もある。
ネーデルラント絵画史におけるブリューゲルの役割は計り知れない。その芸術は彼の二人の息子、孫、ひ孫たちだけでなく、ポスト・ブリューゲルの画家たちによって継承された。

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