「植物と歩く」とはどういうことでしょう? 植物は一つの場所に留まっていながらも、根は地中に、茎や葉は地上に伸びて這(は)い広がり、花をひらかせてはしぼむ、その一生は動きに満ちています。本展では、「植物と歩く」という言葉に、植物の営む時間と空間に感覚をひらき、ともに過ごすという意味を込めました。作家は植物を観察しその特徴をとらえようとするなかで、普段わたしたちが気づかずに通りすぎてしまうようなその意外な姿に迫り、自身の思いを重ねてイメージを作りあげるのかもしれません。
本展では当館のコレクションを中心に展示し、植物がどのように作家を触発してきたかを探ります。コレクションからは、画面をおおい尽くさんばかりに増殖する植物の生命力を描いた佐田勝の油彩画とガラス絵、花が散る瞬間を写実的かつ幻想的にとらえる須田悦弘の木彫、水芭蕉を生涯のモチーフとした佐藤多持の屏風や、約3mの大画面に樹木を描いた竹原嘲風の日本画などを展示します。コレクションに加えて、植物学者・牧野富太郎による植物図と植物標本や、倉科光子による種と芽吹きの両方の時間を記録する絵画を紹介します。
皆さんも、実在の植物から想像上の植物まで、美術館に集まった魅力あふれる植物たちとともに歩いてみませんか。
〈展覧会の見どころ〉
・洋画、日本画、ガラス絵、版画、彫刻、和本、植物標本などのさまざまなジャンルの作品が見られる!
・練馬区ゆかりの植物分類学者・牧野富太郎が作った植物標本や、牧野が原画を描いた植物図を展示!
・展示作品が制作された1910年代から2020年代までの約100年にわたる多様な植物にまつわる表現をご紹介!
牧野富太郎 「ホテイラン」(東京帝国大学理科大学植物学教室編纂『大日本植物志』、第一巻第四集、第一六図版) 1911年紙に多色石版印刷 個人蔵 ※画像写真の無断転載を禁じます
竹原嘲風 《豊秋禽喜》 1929年 紙本着色 練馬区立美術館蔵 ※画像写真の無断転載を禁じます
須田悦弘 《チューリップ》 1996年 岩絵具・木 練馬区立美術館蔵 © Yoshihiro Suda / Courtesy of Gallery Koyanagi ※画像写真の無断転載を禁じます