19世紀前半のビーダーマイヤーと世紀転換期という、ウィーンの生活文化における二つの輝かしい時代を取り上げ、銀器、陶磁器、ガラス、ジュエリー、ドレス、家具など、多彩な作品約270点をご紹介します。両時代の工芸やデザインに通底するのは、生活に根ざした実用性と快適さ、誠実で節度ある装飾、そして自然への眼差しと詩的な遊び心です。これら両時代に共通する美意識を、相互比較や空間構成によってご体感いただきます。
ウィーンは19世紀から20世紀初頭にかけて、独自のモダンスタイルを築きました。オットー・ヴァーグナーが実用性と合理性を重視する「実用様式」を提唱し、その思想に共鳴した弟子ヨーゼフ・ホフマンらが推進したウィーン世紀末のデザインは、幾何学的で建築的な造形を特徴とし、実用性と快適さを実現する機能美が備わっていたといえるでしょう。この世紀末のデザイン革新の背景には、19世紀前半のビーダーマイヤー様式への回帰があります。手工業の質の高さ、模倣ではない主体的なデザイン、自然モチーフへの親しみは、世紀末のデザイナーたちにとって「近代的な住文化の出発点」として賞賛されました。過去の遺産を意識的に継承し、造形の基盤として参照しながら、より時代に即した造形に発展させることで独自の「ウィーン・スタイル」を獲得したのです。そのありようを、魅力的な作品群に加え、当時際立った存在であった女性パトロンや文化人の活動も交えて多面的にご紹介します。さらに最終章では、世紀末ウィーンを越えてなお継承されるそのスタイルについて検証します。
NUNOが本展のためにデザインした織物を作品の展示面に使用した、特別な鑑賞空間で皆さまをお待ちします。
《椅子》 1820年頃 アセンバウム・コレクション Asenbaum Collection, ©Asenbaum Photo Archive ※画像・写真の無断転載を禁じます
ウィーン磁器工房 《カップアンドソーサー》 1818年 S.J.パッツル・コレクション S.J.Patzl Collection, ©Asenbaum Photo Archive, Fotografer: Brigit und Peter Kainz ※画像・写真の無断転載を禁じます
コロマン・モーザー 《アームチェア》 1903年頃 豊田市美術館 ※画像・写真の無断転載を禁じます
ヨーゼフ・ホフマン(器デザイン)、マリア、リカルツ(装飾) 《ボックス》 《花器》 1920年頃 エルンスト・プロイル・コレクション Ernst Ploil Collection, ©Foto:Leopold Museum, Wien ※画像・写真の無断転載を禁じます
ダゴベルト・ペッヒェ 《箪笥(チューリッヒ支店の家具の一部)》 1917年 エルンスト・プロイル・コレクション Ernst Ploil Collection, ©Christian Mendez / MAK ※画像・写真の無断転載を禁じます
フェリーチェ・リックス(上野リチ) 《七宝飾箱「馬のサーカス�機廖� 1950年頃(1987年再制作) 京都国立近代美術館 ※画像・写真の無断転載を禁じます