香月泰男と、いわさきちひろ、生涯会うことはなかったものの、同じ時代を生きたふたり。戦争の苦しみを知っていたがゆえに、家族や身近なものを大切にする想いは強く、それぞれの創作の根底には、平和への願いがありました。

香月泰男（かつきやすお）は、１９１１年、山口県生まれの画家で、第二次世界大戦後のシベリア抑留から復員後、ほぼ故郷の三隅を離れることなく、愛する家族や身近な自然のなかで制作を続けました。捕虜体験を描いた「シベリヤ・シリーズ」が高い評価を得て、１９６９年第一回日本芸術大賞を受賞。７０年代に画壇の人気作家となりました。１９７４年、病気で亡くなり享年６２歳でした。