ムットーニが創り出す人形たちは、６０cm四方ほどの箱が舞台となり、ほのかな光・音楽、複雑な仕掛けとともに、物語を演じ始めます。彼の創り出すものは単なる人形や装置ではなく、その物語そのもの。ＢＯＸシアターという名の箱は、見るものを現実から異次元へと連れ出す、不思議な夢装置といった方がいいのかも知れません。 人形から、仕掛け、ストーリー、そして音楽に至るまで全てをムットーニ自身が独りで制作する迷宮の世界。「小さな箱の中で、何度も同じことが繰り返されているけれど、そこにはすごく深く凝縮されたいろいろな要素がある。」と本人が語るように、天使やヴィーナス、アンドロイドなど主人公たちが演じる数分間に、見る側の体験や思い出さえもが積み重ねられていきます。箱のふたが閉じられ、人形たちの物語は終わっても、私達の心の中に、いつまでも物悲しい懐かしさと忘れ去った浪漫が響き続けます。
　現在、展覧会以外では、一般の人が簡単に見ることはできないムットーニ作品。本展では初めての大回顧展とも言えるスケールで、代表作と新作約５０点を一堂に展観します。機械仕掛けの人形たちの短くも甘く切ないストーリーを、体感して頂くとともに、過去から現在に至る作品の変遷をたどりながら、ムットーニのイマジネーションの源とその作品の魅力を探ります。

ミニ上演会（入場料のみ）会期中、毎日・数回開催の予定。
展覧会場内にて、ムットーニ自身が作品を動かしながら物語ります。