ナカイチ海産
高知県室戸で獲れた高級魚、金目鯛をはじめとした
高知県の東の端にニョキっと突き出た大きな半島が室戸半島です。半島はマッコウクジラが悠々と泳ぎまわる水深3000mを越える深い海に囲まれていて、水深374mから採取した室戸海洋深層水は、海洋汚染のない豊富なミネラルを含んだ水としてさまざまな用途に使われています。
今回ご紹介するのは、その室戸の海にこだわって干物を加工販売している「ナカイチ海産」。お店は室戸半島の最先端、室戸岬町にありますが、そのこだわりぶりが徹底していることで、地元では知る人ぞ知るおいしい干物屋さんです。
店主の中野和平さんは現在56歳、東京の無線機器会社のサラリーマンをしていた32歳のときに呼び戻されてお父さんが30年前に作った干物屋の社長になったという経歴の持ち主です。中野さんのこだわりは、まず地元産のいちばんおいしい時期の、つまり旬の魚を出来るだけ使うこと。「干物は素材の魚次第、旬のいちばんいい時に魚を確保して干物に加工、冷凍して周年出荷しています」。干物の中には外国産や他の地域で穫れた冷凍ものを加工して、加工地を生産地として表記するものが多いのですが、ナカイチ海産の金目鯛、カマスの干物は水揚げも加工も100%室戸産です。
加工は室戸深層水に赤穂の塩、手作りのみりんを加えたタレにひと晩漬け込み、20℃の温風で4時間室内乾燥をかけて干物にします。手作りのみりんのレシピは企業秘密だそう。
こだわりの干物屋「ナカイチ海産」の一番人気の商品は、キンメダイを使った「金目のひらき」。ゆっくりとう焼きあげると、キリリときいた塩気、程よくのった脂、ほろりとほぐれる身がたまらない。自慢の室戸沖獲れのキンメダイは、関西の市場でも評価の高い高級魚ですが、その理由は日戻り漁にあります。室戸沖の漁場は港から近く、漁船もほとんどが日帰りでその日に釣れた一本釣りの新鮮なキンメダイが魚市場に入荷するのです。
室戸岬漁港にある室戸岬東漁協をのぞいてみると、ちょうど漁から帰った漁船が次々接岸し、大型のキンメダイを水揚げしていました。獲れたてのキンメダイは赤ではなく、鮮やかなピンク色をしているのだそう。これらの船は夜中の2時に出船して室戸沖で漁をし、市場の搬入締め切りの3時までに港に戻ってくる。つまりその日の午前中に釣れたキンメダイが午後3時には水揚げされているということなんです。
ナカイチ海産の「金目のひらき」は、夕方買い付けた日戻り漁のキンメダイを、あえて一晩寝かせてから干物に加工している。「500gほどの小さいものを選んで買い付けます。干物の素材は活きが良すぎてもダメで、素材の旨みの出るタイミングを見計らって加工します」と中野社長。
ナカイチ海産の商品には「金目のひらき」のほか、ゴマサバ、カマスなどがありますが、ちょっと変わったところで「マイラてつぼし」という商品があります。これは地元でマイラとよぶ体長4mほどのアオザメという鮫の身を短冊に切って干物にしたもので、大変に美味なことで知られています。三重や広島、高知など限られた地域だけで食べられている地域限定食材だそう。ぜひ一度ご賞味ください。